「ソーシャルスキル編」の活用にあたって

サポートプログラム作成の目的

 通常の学級の中には,LD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症等の特別な教育的支援を必要とする子どもが在籍しています。これらの子どもは,国語や算数などの学習面でのつまずきや,席にじっと座っていられない,順番が待てない,ルールがわからない,友だちとのトラブルが多いなど,生活面行動面でも様々な問題を抱えています。特に,社会性の未成熟から起こるこうした問題は,学校生活の中では,「自分勝手でわがままな子」「乱暴で困った子」「思いやりのない子」などと周囲から見られがちです。そして,そのことが原因で自己イメージの低下を招き,ひいては緘黙や不登校等の二次障害を引き起こす場合もあります。このような子どもに対しては,社会生活を円滑にするための対人関係能力の育成を図ることが大切になります。

そこで,こうした子どもの社会性を育てるためのトレーニングメニューを紹介した「ソーシャルスキル編」を作成しました。

本冊子を有効に活用して,学習面や生活面,行動面につまずきや困難さを抱える子どもに適切なアプローチがされることを願っています。

 

ソーシャルスキル編の三つの特長

特長1:学校生活の一日の流れに沿って作成しました。

  登校時から下校時までの学校生活の一日の流れに沿いながら,「生活習慣の確立」「学習習慣の確立」「対人関係能力の育成」をめざしたソーシャルスキルトレーニングメニューです。

  学級生活の中で,現在困っている問題のページを開くことで,ソーシャルスキルトレーニングの

メニューがわかるようになっています。

特長2:学級集団の中で,担任一人で指導できる内容を取り上げています。

  子どもの学校生活の中心場面となる学級の中で,担任一人で指導できる内容です。例えば,様々な遊びや教科のちょっとした時間の活用等,個別の抜き出し指導ではなく、学級の友だちとのかかわりを重視しながら無理なく取り組める内容にしています。

   特長3:学級の一員としての自覚を育て,望ましい行動をめざした様々なトレーニングメニューを用意しました。

  問題行動の改善のみでは,ソーシャルスキルが高まったとは言えません。問題行動の改善を通して,社会生活を円滑に するための対人関係能力の育成を図ることが最も大切なことです。友だちとの遊びや活動を通してよりよいかかわりを学 ぶものや,一人でのスキルアップトレーニングから学級の一員として望ましい行動に発展させるものなど,様々なトレー ニングメニューを用意しました。

 

 

ソーシャルスキルトレーニングの進め方

@活動内容や目標の確認(動機付け)

 取り組む前に,活動の内容や目標につい て,個別に指示・確認するようにします。

 子ども自身に活動内容を理解させ,目標を持って取り組めるようにするためです。

 

A良いモデルで活動を確認(モデリング)

 活動する際にモデルが必要な場合は,良いモデルの友だちを見せるようにします。

 教師がモデルを示したほうがよい場合もあります。これは,「自分にもできる」「やってみたい」という意欲を持たせるためです。

 また,モデルを見せる際は、注目させる所や良い点はどこか等について,アドバイスするようにしましょう。

 

B安心して活動できる状況の設定

 グループで活動する際は,仲良しの友だちや心配りのできる友だちのグループになるように配慮します。

 現在,困難・苦手とすることに取り組むのですから,楽しく安心して活動できる環境が大切です。

C振り返りと評価 

振り返り

 活動後に振り返りの時間を設けるようにします。

 子ども自らが,目標の達成度や活動した時の気持ち等について振り返ることが大切です。その時に,教師は良かった点をほめ,次につながる助言・励ましをして意欲が継続できるようにしていきます。

  また,活動を共にしてくれた友だちや学級全体への評価も忘れずにすることが大切です。案外このことが忘れがちですので留意が必要です。 

評価 

 子どもにとって励みとなる効果的な評価が大切です。ことばのみによる評価やシールや丸を使う評価が一般的です。

 シールや丸を使うと,評価が累積され,また、視覚でも確認できるため、この方法が有効な場合が多いです。

 メニューの中にめあてカードを作り,シールや丸で評価するという方法を紹介しているのはそのためです。 

 また,友だちからも良い点を話してもらうようにすると,喜びや自信、次回への意欲が持てるようになります。  

D適切な支援と成功体験

 取り組みを開始したら適切な支援をしていきながら,成功体験を数多く積ませましょう。

 困難なことを乗り越えるために取り組む訳ですから,本当は失敗して当然なのです。しかし,失敗の連続では自信を失ってしまいます。失敗しそうであれば,即座に適切な支援をし,成功体験に変えていくことが大切です。「転ばぬ先の杖」も時には必要と心得るといいでしょう。

 「できた」「できるんだ」という喜びや成就感をたくさん味わわせていくことが何より大切といえるでしょう。

 

 

 

 

<ソーシャルスキルの内容例>

登校時・後

ソーシャルスキルの内容例

自分からあいさつができるように (対人関係)

学習の準備ができるように(学習習慣)

係活動に進んで取り組めるように(生活習慣)

授 業 時

学習道具を整えられるように(学習習慣)

予定の変更があっても対処できるように(生活習慣)

話を最後まで聞けるように(対人関係)

落ち着いて課題に取り組めるように(学習習慣)

学級全体への呼びかけに応じられるように (生活習慣

順番が守れるように(対人関係)

10

グループ活動ができるように (対人関係)

11

教室外での活動ができるように (対人関係)

12

物をなくさないように (生活習慣)

休み時間

13

ルールを守って楽しく遊べるように (対人関係)

14

友だちと一緒に遊べるように(対人関係)

15

後片づけができるように(生活習慣)

給 食 時

16

楽しく給食が食べられるように(生活習慣)

集 会 時

17

全校集会に参加できるように (生活習慣)

清 掃 時

18

清掃活動に進んで取り組めるように(生活習慣)

クラブ活動

19

異年齢集団の中で活動できるように(対人関係)

帰りの会

20

忘れ物がないように (生活習慣)