科学部の活動
科学部が緑町中学校の代表として、千葉市科学館「きぼーる」で「日向大豆」の種子を譲り受けました。いただいた16粒のうち、半数は国際宇宙ステーションの日本実験棟きぼうに9ヶ月間保管されていたものです。宇宙での無重力状態や宇宙線の影響などにより、変異が生じるのか、3世代に渡って研究していくことになりました。2年生の下ヶ橋君が代表として、「貴重な大豆を大切に育て、研究していきたい」と抱負を述べました。新部長の野口君が、種子を受け取りました。
その後、市立千葉高校の生物部の方と一緒に、播種式に参加しました。
「宇宙大豆」成長観察記録2011
宇宙は7、地球は4発芽し、2日〜3日に残り全てが発芽した。よって、宇宙・地球とも発芽率100%だった。播種前の種子、発芽直後の子葉の色・形・大きさ・茎の長さや太さともに、見た目に大きな違いは見られない。
左は地球株、右は宇宙株の成長の様子。子葉は黄緑色で、栄養をだいぶ使ったようで、しわになってやや黄色くなり、しおれてきているものもある。また、本葉が出始め、早い株で茎が第2節、第3節まで伸び、先端に3枚1セットの黄緑色の葉がついている。葉の枚数と、茎の長さは有意差があるといえるほどの違いはないようだ。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 2.5枚 | 3.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 17cm | 16cm |
第2理科室の窓側にポットを置いていたが、曇りが続いたことと、武道場の影になってしまい日当たりが想像以上に悪かったため、茎がどちらの株も細長くひょろひょろに伸びてしまった…。照度計できちんと測定すると、やはり屋内では植物の生育に良いといわれる1000ルクスに全然足りなかった。そこで、日中はポットを800〜1000ルクスある理科室のベランダに出して、十分に日光に当てることにした。
左が地球のbP、右が宇宙のbPの株。日当たりを良くしたが、一週間ではまだ十分に光合成できていないのか、どちらも茎は細くて折れそうで、ひょろひょろのままだ。宇宙bWと地球に、1枚の本葉にそれぞれ斑入りのものが見られた。何か変異につながっていたらおもしろい。茎がかなり 伸びてきたので、鉢上げを行った。その際に、それぞれの根の最長の長さを測定し、記録した。葉の数は差がなさそう。茎の長さはやや宇宙株が長いようだ。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 2.5枚 | 3.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 17cm | 16cm |
| 根の長さ(cm) | ?cm | ?cm |
根の様子 意外に長い 鉢上げする部員の様子 鉢上げ後の様子
左が地球bQ、右が宇宙bWの様子。葉がだんだんと大きく成長し、濃い緑色になった。ただ、茎はまだ弱く細いので、支柱を立てる必要がありそう。宇宙bSの茎の中央部分にある葉がしおれ、茎の途中が膨らんでいる。子葉はだいたいの株でとれた。宇宙bQの主根が長くなった。地球bTの主軸の茎の先端がなぜか枯れてしまったので、無事残った脇芽を育てることにした。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 12.5枚 | 14枚 |
| 茎の全長(cm) | 35.2cm | 26.0cm |
地球bT以外は全て茎の全長が30p以上に大きく成長した。ただし、茎は相変わらずひょろひょろしている。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 15.0枚 | 15.6枚 |
| 茎の全長(cm) | 38.5cm | 32.1cm |
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 19.7枚 | 20.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 43.2cm | 38.1cm |
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 23.1枚 | 28.0枚 |
| 茎の全長(cm) | 56.6cm | 47.4cm |
地球bRの様子 宇宙bUの様子
茎の根元部分から、ようやく木化して固くなってきた。一安心。宇宙の方が葉が大きく元気が良いものが多い。枝は二又や三つ又に枝分かれしている。よく見ると、どの枝の部分が弱って枯れたか、風などの影響を受けたかで、少しずつ株によって違うようだ。宇宙bSが枯れてしまった。残ったのは、宇宙・地球ともに7株だ。何とか無事に育って欲しい。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 48.7枚 | 39.5枚 |
| 茎の全長(cm) | 51.8cm | 43.3cm |
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 50.1枚 | 36.4枚 |
| 茎の全長(cm) | 38.7cm | 38.4cm |
| 花の数(個) | 2.2個 | 0個 |
9月に入り、全ての株で開花が認められた。普通は葉が3枚の複葉がついているものだが、地球bPの葉の一部が、2枚しかついていないものがある。(時折、他の株でも見られるので、落ちたのか元からかは不明)。 葉の数は、やや宇宙が多いようだ。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 50.7枚 | 45.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 40.9cm | 40.3cm |
| 花の数(個) | 不明 | 不明 |
観察する部員達 さやの様子
花の様子 宇宙bP
花が継続して開花している。1日に開花している花の数は、平均すると同じ位のようだ。果実(豆のさや)ができ始めた。人差し指大の大きさのものから、小指の先ほどの小さなものもある。一つのさやに、1〜2個の種子(豆)が入っているようだ。もっとたくさん入っているものはないのだろうか?普通の大豆よりも少ないのかも知れない。ここまでの様子で考えると、宇宙株は少し生育が早いのではないか?「早く食べてみたい…。でもそんなにたくさんなさそう…。」とつぶやく部員もちらほらいた。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 57.8枚 | 55.3枚 |
| 茎の全長(cm) | 48.6cm | 35.1cm |
| 花の数(個) | 6.8個 | 5.8個 |
| さやの数(個) | 6.8個 | 2.4個 |
地球bRの全体 地球bRのさやの様子
宇宙bQの全体 宇宙bQのさやの様子
宇宙の方の葉が、全体的にやや大きめに見える。さやの数も、宇宙の方がやや多いが、宇宙種が多くなるのか、それとも成長が早いのかはまだわからない。テントウムシやアブラムシの被害が出てきたので、ネットを張ったり薬剤で何とかせっかくできた豆を無事熟すまで育てないといけない。一般的な大豆と違って、やはり1つのさやに2個の豆が日向大豆は普通のようだ。花はあまり咲かなくなってきたので、これ以上はさやがあまり増えない可能性がある。大事に育てたい。
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 32.0枚 | 57.8枚 |
| 茎の全長(cm) | 47.1cm | 45.7cm |
| さやの数(個) | 13.6個 | 9.7個 |
【地球1】 【宇宙2】 【宇宙7のさやの様子】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 47.8枚 | 46.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 34.0cm | 35.0cm |
| さやの数(個) | 12.8個 | 8.7個 |
【地球8】 【宇宙2】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 47.2枚 | 34.2枚 |
| 茎の全長(cm) | 44.5cm | 34.5cm |
| さやの数(個) | 10.3個 | 10.4個 |
【地球2:枯れ始めてきた】 【地球1:まだ青々としている】
【宇宙2:まだ青い】 【宇宙6:すっかり枯れた】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 43.6枚 | 15.1枚 |
| 茎の全長(cm) | 39.5cm | 34.7cm |
| さやの数(個) | 14.5個 | 12.2個 |
【地球1:枯れ始めた】 【地球2:すっかり枯れた】
【宇宙1:枯れ始めた】 【宇宙2:枯れ始めた】 【宇宙6:枯れてさらに乾燥】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 17.6枚 | 14.5枚 |
| 茎の全長(cm) | 39.8cm | 34.8cm |
| さやの数(個) | 9.5個 | 10.2個 |
【地球1】 【地球8:枯れてきた】
【宇宙1:葉が落ちた】 【宇宙2:さやが黄色く色づく】 【宇宙7:さやが熟してきた】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 21枚 | 20 |
| 茎の全長(cm) | 37.0cm | 36.6cm |
| さやの数(個) | 7.6個 | 8.5個 |
【地球1:ほぼ枯れた】 【地球2:成熟した】 【地球1:抜いた根の様子】
【宇宙2:さやが枯れてきた】 【宇宙7:成熟して枯れた】 【宇宙8:抜いた根の様子】
| 平均値 | 宇宙株の平均値 | 地球株の平均値 |
| 葉の数(枚) | 12枚 | 17 |
| 茎の全長(cm) | 33.3cm | 25.7cm |
| さやの数(個) | 8.3個 | 6.4個 |
大部分のさやが乾燥して、固く熟してきたので本日、部員で収穫を行った。根ごと鉢から引き抜いてみると、根はよく張っているものもあれば、短い根のものもあったが、地球・宇宙での差はあまりないようで、株による差が大きかった。根には所々にコブがあり、根粒菌がいることがよくわかった。根粒の数はきちんと数えていなかったが、差はあまり見られなかった。
なお、収穫できた種子の数は、株によって差が大きく開いたが、地球種と宇宙種で平均をとると、あまり大きな収率の差はみられないようだ。なお、虫食いによる被害が多い株もあったので、次年度は収穫期前には網掛けや最小限の農薬なども時期に応じてする必要があると思う。
<収穫後の種子の様子>
収穫した当初は、チャック付きビニール袋に小分けにして保存した。しかし2日後に開けて確認すると、一部の種子に青カビや白カビが生じていた…。まだ十分に乾燥しきれていない種子だったせいと考えられたので、ハトロン紙の封筒に小分けにして、数日間室内で乾燥させてから保管した。2週間後には、カビもなくなり、密閉して保管できる状態になった。目標の100粒以上には及ばなかったが、無事に収穫できたことにほっとしている。
2011年・宇宙大豆第1世代の成長についての考察
2011年6月28日の播種〜12月1日の収穫までの結果を、グラフで表すと以下の通りであった。
(1)葉の数の変化
発芽から9月16日までの成長期では大きな差はみられなかった。その後、さやが成熟するにつれて葉が黄色く変化して枯れて落ちていった。収穫期の11月下旬には、ほとんどの葉が枯れていた。
この落葉する時期は、平均すると宇宙種の方が速く落ちているようにも見える。しかし、その後また増加しているため、これは部員の数え方にむらがあったためだと考えられる。第16週以降は、両者とも同じ様にゆるやかに枚数を減らしていることから、葉の数による差は第1世代ではほとんどみられないといえる。
(2)茎の全長の変化
発芽から本葉数枚を出す第3週までは、大きな違いは見られなかった。第4週から、開花の2週間前頃の第7週までは宇宙種が10p前後長くなっている時期が続いていた。その後、さやができ始めて2週後の第13週頃には両者はほぼ同じ位に並んでいる。このため、茎の成長期である第3週〜第7週頃は、地球種よりも宇宙種の茎の伸長の度合いが大きいと考えられる。しかし、茎が固くなって木化する時期は同じ第8週頃で、開花する第10週までには地球種も同じ位の長さに追いついている。よって、初期の成長が宇宙種ではやや早くなるか、茎の節間が地球種よりも徒長して間延びしている可能性があるだろう。最終的には日照時間や温度などの影響も受けて、地球種と同じ長さに落ち着いたのではないだろうか。なお、木化する第8週までに、支柱で支えておく必要があることがわかった。
(3)花の数の比較
開花は、第9週の8月31日には開始していた。恐らく、数日前から咲き始めていたと思う。この後、第12週の9月下旬までは小さな花が咲き続けた。宇宙種と地球種で、あまり詳細な観察ができなかったのではっきりとはいえないが、花の数や咲く時期についてはあまり大きな差はなかったと考えられる。
(4)さやの数の変化
さやは開花後約2週間の第11週頃から、はっきりと見え始めた。初めは小さく1粒しか入っていなそうだったが、収穫までには1さやに最大で3粒、最小でも1粒は中に種子が入った状態に成長した。さやと内部の種子は約1ヶ月で大きく成長し、その後の1ヶ月でさらに成熟し、固く乾燥していき、約2ヶ月が必要であった。
さやの数は、宇宙種の方が全体的に多くでき始めたものの、成長途中で小さいまま枯れてしまうさや、収穫前に虫食いになるさやも多くあった。地球種のさやの数は、宇宙種に比べるとやや少ないが、低め安定で細々と成長、成熟した種子がほとんどであった。そのため収穫時には、宇宙と地球での大きな差は見られなくなった。
(5)生存率の変化
宇宙種・地球種ともに8株から栽培を始めたが、今年の猛暑のせいか8月中旬の第7週〜第8週に2株ずつ、両者とも枯死してしまったものもあった。その後は、虫がついたりすることもあったが、台風や大雨の際は必ず屋内に取り込んだので、枯れることはなかった。
(6)種子の収穫量と予想収量との比較
種子の収量は、宇宙種・地球種であまり大きな差はみられなかった。ただし、第18週〜第21週の間で虫食いや成長不良のさやが多くみつかっていたので、この時期に虫害対策をし、早い時期から化成肥料以外に草木灰などをまくなどしていれば、より多くの種子を収穫できた可能性が高い。また、宇宙種では小型の成長が不十分は種子が多く収穫されたので、播種して発芽しそうな大きい粒の種子の数で考えると、地球種と差はより少なくなる。第1世代は、完全に無農薬栽培であり、虫害や成長不足な可能性が株により高かったので、この点を改善し、同一条件になるよう工夫すれば、もっと確実な差が見えてくるのではないか。
結論
第1世代での宇宙株と地球株を比較すると、以下のような結論となった。
@葉の数による差は、第1世代ではほとんどない
A発芽〜第3週(本葉を出す時期):大きな違いはない。
第3週〜7週(茎・葉の成長期):宇宙種の茎が伸長する。
第8週(茎が木化する)〜第10週(開花期):地球種も同じ長さに追いつく。
初期の成長が宇宙種ではやや早くなるか、茎の節間が地球種よりも徒長して間延びしている可能性があるが、最終的には地球種も同じ長さに成長した。
B第9週〜12週(開花期):花の数や咲く時期について、差はあまりない。
C第11週〜(さやの成長期):1さや中に1〜3粒が入った状態に成長した。成熟には約2ヶ月が必要。
さやの数は、宇宙種の方が全体的に多くでき始めたものの、収穫時には、宇宙と地球での大きな差はなくなった。
D宇宙種・地球種ともに8株から栽培を始めた。
8月中旬の第7週〜8週に2株ずつ、両者とも枯死したため、生存率はほぼ同程度であった。
E種子の収量は、宇宙種・地球種であまり大きな差はみられなかった。
しかし、枯死や虫害で収穫できなかった種子が多くあったため、栽培環境を整えることで大きく差がでる可能性はある。また、数だけでなく、種子あたりの質量(g)で比較する必要がある。
